発達障害理学療法学
1,小児神経系理学療法学の歴史
2,原子反射の評価
3,姿勢反応・姿勢緊張の評価
①立ち直り反応
(体に働く頸の立ち直り反応:NOB)
・出現時期:新生児~5歳
・刺激方法:頭を回旋
・反応:体全体が立ち直る
(頭に働く体の立ち直り反応:BOH)
・出現時期:新生児-2歳~5歳
・刺激方法:体の一部が指示面に触れる
・反応:頭の位置を正す
(体に働く体の立ち直り反応:BOB)
・出現時期:4か月~5歳
・刺激方法:体幹のねじれ
・反応:体幹を対照的な位置に保とうとする(減捻性反射)
(迷路性立ち直り反応)
・出現時期:新生児~生涯
・刺激方法:腹臥位
・反応:頭の挙上
(視性立ち直り反応)
・出現時期:新生児-2か月~生涯
・刺激方法:引き起こす
・反応:頭の挙上
②平衡反応
(傾斜反応)
・出現時期:(腹臥位)6か月、(背臥位)7-8か月、(座位)7-8か月、(四つ這い)9-12か月、(立位)12-21か月
・刺激方法:迷路刺激
・反応:
カウンターバランス→重心移動とは反対方向に手足を重りとして利用
カウンターローテーション→一つの分節の回旋に対して他の分節が逆方向に回旋
③保護伸展反応
(前方パラシュート)
・出現時期:6か月=座位保持
(側方パラシュート)
・出現時期:8か月=座位姿勢の完成
(後方パラシュート)
・出現時期:10か月=立位姿勢の獲得、座位での体幹回旋
4,姿勢と運動の発達1(筋緊張・姿勢緊張)
①筋トーヌスの異常の生理学的意味
・痙性:
筋の痙縮(過緊張)に基づく四肢、関節の過剰状態をもった動き
抵抗は、開始域で強く、突然抵抗が弱まる
上肢は屈筋、下肢は伸筋
ex)ジャックナイフ現象
・固縮:
他動的な動きに、持続的な抵抗
ex)鉛管現象、歯車現象
・アテトーゼ
筋緊張が過度になったり消失したり、正常範囲を超えて動揺
・弛緩:
自発的なコントロールが無い、過度にリラックスした状態
②筋トーヌスの評価と異常所見
・伸張性(extensibility)
→window sign(手関節掌屈90°以上)
股関節開排角度
足関節背屈
膝関節伸展(膝下角)
スカーフ徴候
Placing&Holding
・被動性
・筋の硬さ
③連合反応
・健側の使用により、患側の緊張が一定のパターンでいつも反応する
④発達のギャップと知的発達
・暦年齢より2か月の差は注意
・早産の場合は在胎週を考慮
・知的良、運動悪→健側の代償増加
・運動先行→平衡反応、防御反応成熟しづらい
・知的運動低い→反応乏しい
・知的低い→不快刺激の閾値高くなり異常姿勢で拘縮を生じる
5,姿勢と運動の発達2(腹臥位と背臥位)
①腹臥位の一連の発達
・新生児期:保護的頭部回旋、鼠径部離床
・1か月:頚部伸展
・2か月:肩外転・前腕支持増加
・3か月:on elbows、鼠径部接地
・4-5か月:air plane activity、両上肢・下肢外転、三点支持→偶発的寝返り
・6か月:on hands、寝返り
・7か月:後ずさり、ピボット
・9-10か月:四つ這い
・12-13か月:高這い→直立位
②背臥位の一連の発達
・新生児期:屈曲優位、探索反射(口からbody imagea発達)
・1か月:ATNR
・3か月:正中位指向
・4-6か月:膝下角拡大→手と膝足の出会い→偶発的寝返り
・8か月:生理的多動
6,姿勢と運動の発達3(座位、立位・歩行)
①立位の発達
・新生児期:初期起立、初期歩行
・2-3か月:失立、失歩行
・4-5か月:腋窩を支えると少し体重負荷
・6-7か月:起立位保持で飛び跳ねる
・8-9か月:両下肢の全荷重負荷
・9-10か月:つかまり立ち
・9か月:片手支持で立つ、両手支持でよちよち
・11-12か月:つかまり歩き、両手を離して立位保持
・12-13か月:両手離して歩ける(High guard)
・18か月:Low guard
②座位の発達
第一段階
・4-5か月:腰を支えると座る
第二段階
・5-6か月:両手を前について丸まって
・6か月:手をついて
・7か月:手を離して、背を伸ばして、ハイハイ、ring sitting
・8か月:体をねじって横の物を取る
第三段階
・9か月:生理的多動
③歩行の発達
7,コミュニケーションの発達
①6歳までの立位の発達
・18か月:片手支持で階段を昇降する
・2歳:手すりを伝って一人で階段昇降、両足で一歩跳ぶ
・3歳:階段を両足を交互に踏み出して昇り、両下肢をそろえて降りる
・3歳6か月:2s片足立ちができる
・4歳:片脚ずつ交互に出して階段昇降する
・5歳:細い線に沿って歩ける
・6歳:25㎝のロープを飛び越える
②6歳までの上肢の発達
・目によるコントロール→把持、要しない→把握
・4-6か月:Hand orientation
・6-8か月:orientationとgrope、ピンチの発達
・8-11か月:grasp
③6歳までのことばの発達
・1か月:開鼻音
・3か月:笑いに声が伴ってくる、喃語
・4か月:咬反射、舌尖、喉音
・5か月:破裂音
・6か月:唇音、舌音
・7か月:Fingering
・8か月:最初の対話
・9か月:人見知り、言葉の真似
・11か月:よだれコントロール失う
・12か月:表現の発達はないが、理解は発達
・13か月:ジャーゴン
・21か月:2語文話す
・24か月:3語文話す
・3歳:多くの質問をする
・4歳:生理的な吃音
8,新生児集中治療室における理学療法
①未熟児の評価の概要
・出生体重:超未熟児(1000g未満)、極小未熟児(1500g未満)、低出生体重児(2500g未満)、巨大児(4000g未満)
・在胎週数:早産児(37週未満)、過期産児(42週以上)
・胎児発育曲線
・臨床所見:Dysmature児→体内栄養不全型
②未熟児における主な疾患
・子宮内発育不全(IUGR)→トキソプラズマ
・新生児仮死:呼吸循環不全
・未熟児無呼吸発作:20s以上の無呼吸、20s未満でも徐脈・チアノーゼ
・新生児呼吸窮迫症候群
・慢性肺障害
・核黄疸:間接ビリルビンによる、交換輸血・光線療法、アテトーゼ型脳性麻痺
・新生児低血糖
・新生児頭蓋内出血
・嚢胞形成脳室周囲性白質軟化(PVL):境界域に虚血、痙直型両麻痺
③positioning,handling
・positioning:屈曲、正中位
・handling:音と光刺激からの保護、ケアパターンの調整、快適な感覚運動刺激
①脳性麻痺の分類
・類別型:痙直型、アテトーゼ型、失調型。。。
②病態
・PVLが主要な原因
③発達の特徴
・下肢の分離がほとんど認められない
・背屈困難
・膝窩角が拡大
④特異的な姿勢、動作
・伸展・屈曲パターン→亜脱臼・脱臼
・寝返り:上半身の過剰なねじれ、連合反応、頭部の過剰な伸展と回旋
・ずりばい
・割座
・長坐位苦手
⑤歩行
・バニーホッピング
①認知機能の特徴
・図と地の弁別障害
②股関節亜脱臼・脱臼の機構
・はさみ肢位、wind swept肢位
・股関節の形成不全:頚体角・前捻角・臼蓋角拡大、CE角減少、Calve線・Shenton線崩れる
③病態
・3か月ごろ患側の動きが少ないことで気づく
・非対称性
④特異的な姿勢
・斜頸
⑤特異的な起居移動動作
・寝返り:健側上肢の前方突出と肩屈曲の寝返りで患側へ寝返る
・ハイハイ:健側上肢で手繰り寄せるように
・背ばい
・四つ這いほとんどしない
・ずりばい
・ゆっくりした動作ができない
・健側上肢で引き上げるように立ち上がる
⑥上肢機能
・両手活動ができない
⑦歩行の問題
・下肢伸展パターン、股関節屈曲は残る
・尖足
①病態
・不随意運動・言語障害・腱反射の亢進なし・知的理解力正常
・上半身の障害が重度
・核黄疸:大脳基底核障害
②筋緊張の異常
・間欠的緊張性痙縮
・移動性痙縮
・一過性局所収縮
③起居動作
・腹臥位好まない
・割座好む
・歩行時の動揺
④残存する原始反射の影響
・ガラント反応:体幹不安定。。。
・ATNR:頭部を正中位に保持できない
⑤理学療法の方向性
・筋緊張の安定化→中枢部へのアプローチ
・非対称性に働きかける
・対称的な抗重力姿勢での同時収縮を高める
・段階的な運動コントロール
・繰り返し運動の有効性
⑥将来的問題
①特徴
・スカーフ徴候亢進
・足背屈増強
・足底アーチの低下
・股関節内転筋トーヌス低下
①染色体異常
・21番染色体トリソミー:21番染色体が1本多く、合計47本
②病態
・標準型(95%)、モザイク型(2%)、転座型(3-5%)
・筋の低緊張、心臓心血管系の障害、精神発達遅滞
③筋緊張の異常
・フロッピーインファント
④特徴的な肢位・動作
・座位では支持基底面を広く取り、身体の中心線を崩すまで姿勢制御反応が出現しない
・立位でのワイドベース
・口腔、腹部、足底の触覚過敏
⑤理学療法
・臥位期:抗重力筋の活性を高める姿勢と運動を段階的に経験させる(on elbows,on hands)
・座位獲得期:バランス崩す→自立反応群の促通
・立位への準備期:座位でのパラシュート反応、立位での立ち直り反応、四つ這い運動、膝立ち
・目標:2歳までの歩行獲得
⑥理学療法におけるリスク
・過負荷とストレスの回避
・低緊張への配慮
①Duchenne型の病態
・X連鎖性劣性遺伝
・一時的なジストロフィンの機能不全→Ca⁺細胞内へ流入→タンパク質分解酵素などを活性化→筋繊維融解→筋繊維壊死→脂肪組織・結合組織に置換
・発症年齢:3-4歳→歩行不能:7-11歳→呼吸不全で死亡:20-25歳
・下腿部に仮性肥大
・登はん性起立(ガワ―ズ徴候)
②Duchenne型のステージ
Stage1:階段昇降可能(手の介助なし、手の膝おさえ)
Stage2:階段昇降可能(手すり)
Stage3:椅子からの起立可能
Stage4:歩行可能
Stage5:四つ這い可能
Stage6:いざばい可能
Stage7:座位の保持可能
Stage8:常時臥床状態
③Duchenne型に特徴的な姿勢・動作
・アヒル様歩行
・軽度の尖足、脊柱胸郭の変形
④Duchenne型の各ステージにおける理学療法の考え方
・初期:運動機能のサポート
・進行期:機能維持のサポート
・終末期:呼吸機能のサポート
⑤CMDの病態
・筋緊張低下、顔面筋麻痺、精神運動発達遅滞
⑥CMDの理学療法
・発達の促進と障害要素の排除
・筋力増強
・筋の伸張
・装具療法
15,二分脊椎の理学療法
①病態・合併症
・痙性弛緩性運動麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害
・合併症:水頭症、アーノルド・キアリ変形、水髄症、脊髄空洞症、大脳形成異常
②Sharradの分類
1群:Th12
2群:L1-2
3群:L3-4
4群:L5
5群:S1-2
6群:S3
③Hofferの歩行機能レベル
Score1:独歩(L5,S1,S2-3)、杖歩行(L3,L4)
Score2:(L1,L2)
Score3:(Th)
Score4:(Th)
④特徴的変形
・屈曲膝
・尖足内反
・反張膝
・踵足内反
⑤乳児期の理学療法
・踵足変形の予防→装具
・股関節屈曲拘縮の抑制
・歩行の準備→補装具の使用
・遊びの中で筋力増強
⑥幼児期の理学療法
・底屈位保持による立位安定
・膝過伸展と偏移→LLB
・立位・歩行への誘導→歩行器PCW
・RGO装着による歩行訓練
・プッシュアップ、腹臥位上肢支持、友達との遊び→筋力増強